小説版「言の葉の庭」読了
皆さん、こんばんは。しもべです。


 そう云えば買ってから読んでなかったと思いだし、読んでみた感想。
話の筋は映像作品と同じなので割愛。あくまで小説版に対してのものです。


 映像だと言葉数が少ない分状況や心情・機微がわかりづらい部分も多いので、小説版ではそこに加わる心象描写のおかげでかなり理解・整理しやすくはなったと思います。
 また脇役を含めた登場人物の背景の掘り下げのお陰で、結構見る目も変わってきます。
まぁ3年生の彼女の功罪は何一つ変わりませんがね。

 ただすべてにおいて言葉が入ってくるので正直かなりしつこいと感じる部分も。
「言の葉の庭」は文中にも出てくるような雨の音でやっと気がつくほどの静けさ・静謐さ、光の陰影を用いた映像が訴える情緒が魅力の一つだと思っているのでここまでされると濃すぎる。
あくまで対比ですが、整然と整理された庭園と言うよりは、無秩序に方々に草木が伸びきった原野のような・・・。それが言い過ぎですかね?

 さわやかと言う訳ではないのですが、淑やかで淡く瑞々しい人間模様も、その背景や内面(未成熟な人間たちの葛藤)まで描写される事でかなり生々しい。
印象派の絵画だと思っていたら、実は表現主義?の時代の作品だったような印象です。
人間模様すらも美しい景色の情景の一部だった映像作品とは異なり、小説は言葉が中心である故にどうしても情景表現は脇に置かれ、役者の人間模様が中心に来るのでそれも致し方の無い事なのでしょうね。
同じ作品でも表現技法が違う事の差と言うのはこう言う事かもしれません。

 特に象徴的なのは「雨」が弱い。
重要な要素であるのは事実なのですが、画面の中なら1秒間でも色々な物を描き出し、又は音でその存在を伝える事が出来るのですが、文字の世界では一文字の中で表す事が出来るのは漢字を使って前後の文脈を利用しても限界が有りますからね。
 只それでも、矢張り言葉を拾っていけば雨の存在感は大きいのも事実。
描写され、背景を彩り、状況を作り、心象の比喩にもなっている存在感は健在。むしろ意識すれば話を理解しやすくなった分寄り添いやすくもなっているのかもしれません。と言うよりもよくある単なる舞台装置ではなく、映画で言われるような3人目の主役でもなく、もっと大きな運命を司る何かの象徴の様にすら感じることも。
雨の役割の変化なんかも今回で初めて気が付きました。
やっぱり感じ方を変える必要があるんでしょうね。


 結局二人AfterEpisodeでは明確な描写はないものの、雪野の「雨がやむような」表情変化から作られた笑顔が全てなのかな?とも。雪野は光の庭が「人生のピーク」とも言っていますが、それはどうとでも取れるですからね。


 アニメとは別作品には思えますがこれはこれで、理解を深めるのは悪くない。つまり個人的には解説本の印象が強い。
表現描写の狭くなったのは映像視聴済みの下地が有る事ですし想像力を働かせればいいだけで、作品背景まで理解できるわけですし。
それにその後の話まで載っているのですからね。

 予想していたよりも多くの収穫が有って、この後にまた映像作品の方を見てみようかと思います。きっと理解が益した分感想もまた変わってくる。
読みやすいので、映像作品の方を好きになった方は手に取ってみても損は無いかもしれません。


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